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5.きもののTPO■「格」ってなに?コーディネートの基本

「この着物とこの帯は格が違う」とか「こちらの方が格が上だ」という言い方をお聞きになったことがあるでしょう。
「格」というのは何でしょうか。着物の場合、コーディネートの基本的なルールを決める要素、と考えていいでしょう。たとえば、素材、色彩、文様のつけ方、刺繍・箔押しの有無など。
ちなみに「価格」の高い・安いは直接、格には関係ありません。数百万円の結城紬の着物であっても、結婚式という「場」では、十万円以下の無地の着物よりも、格は下です。礼装にはなりません。
 
一般に染めの着物のほうがよそゆき感が強く、織の着物は、カジュアルな雰囲気が出てきます。逆に帯の場合は、染めの帯よりも織の帯のほうが格上とされます。よく言われるのが、「染めの着物に織の帯、織の着物に染めの帯」ということなのです。
 
格(TPO)による合わせ方の違いを一覧表にしてみました。 
 
  礼装 外出着 普段着
着物
ミス 振袖、色留袖
ミセス 黒留袖 、色留袖
(略礼装)訪問着、付下げ、無地、紋付の江戸小紋   
     
小紋、お召、紬、
シルクウール、化繊、麻
紬、ウール、化繊、木綿、麻
丸帯、袋帯
(略礼装)綴れ帯、織名古屋帯
名古屋帯、しゃれ袋帯 名古屋帯、半巾帯
長襦袢 白無地、ぼかし 無地、ぼかし、絞り、友禅 化繊、メリンス
小物
帯締め…白、金銀の入ったもの 帯揚げ…白の綸子または絞り
(略礼装)色物の綸子または絞り
帯締め…金銀の入らないもの
帯揚げ…無地、柄物
 
 

礼装(第一礼装)の組み合わせ

黒留袖

丁子屋別染めの黒留袖
ミセスの第一礼装です。ミスの振袖にあたります。
祝賀行事に着用しますが、今はほとんどが結婚式で、お仲人夫人や新郎新婦の母親、親族が着るぐらいです。
 
黒地で、模様は裾にしかありません。紋付裾模様のことを「江戸褄模様」(えどづまもよう)といいますが、そこから黒留袖のことを「江戸褄」ともいいます。
最も格の高い染め抜きの日向(ひなた)五つ紋をつけます。
仕立て方は、白の比翼仕立て(ひよくじたて)。比翼仕立てというのは、礼装を表す重ね着に見せた仕立て方で、袷(あわせ=裏地のついた着物)の衿、裾、袖口、振りに、さらに下着の布を重ねて縫いつけたものです。
文字通り、格のうえでも重量のうえでも、最も重たい着物といえます。
 
ここでは、長襦袢も半衿も白、帯揚げ・帯締めも白か、白に金銀の入ったものにします。

色留袖

京繍(日本刺繍)だけで七宝柄を表した色留袖(丁子屋別染め)
黒以外の地色の留袖です。
ミセスだけでなく、ミスでも着ることができます。たとえば結婚式では、ミスの姉妹(振袖を着る年齢ではないミスとか)や親族、列席する側の主賓クラスのかたなど。
 
五つ紋に白の比翼仕立てならば、黒留袖と同様の第一礼装になりますが、三つ紋にしておけば、パーティやお初釜、式典など着る機会が広がります。
 

振袖

切り紙つなぎに橘文様の丁子屋別染めの振袖
ミスの女性が着る袂(たもと)の長い着物です。地紋のある紋綸子地や縮緬地に、豪華な絵羽模様や絞り、刺繍、金箔などを施した華やかなもの。
袖丈によって、大振袖、中振袖、小振袖に分けられます。

袋帯

波に桜花の袋帯と市松柄の袋帯
重厚な柄の道長取り袋帯
七宝文様の唐織袋帯
同じ礼装用の袋帯でも、材質・色調・文様などで合わせる着物が変わってきます。
波に桜花の若々しい袋帯は、振袖や訪問着に合わせるといいでしょう。市松柄のような幾何学柄は、着物の柄として多い花模様の振袖や訪問着に合わせると、着物も帯も引き立ちます。
重厚な柄や金銀の多いものは、黒留袖に締めて結婚式に。
七宝文様(七宝つなぎ)は、平安時代に確立した有職文様のひとつで、格調の高い品のある文様です。金銀が入らない分、留袖、振袖、訪問着、無地まで幅広く締められます。

略礼装の組み合わせ

訪問着と付下げと小紋

小紋の柄付け
付下げの柄付け
訪問着の絵羽模様
絵羽模様の白生地訪問着、手前の反物はこれを染めたもの
訪問着付下げ小紋は、どこが違うのでしょうか。
簡単に言えば、柄(模様)のつけ方が違うのです。
訪問着は、白生地を着物の形に仮仕立てして絵羽模様の下絵を描きます。そのあと、仮仕立てを一度ほどいて反物の状態に戻し、染め加工や刺繍、金彩などを施して加工を終えます。
改めて仮縫いし、店頭に出しますので、私たちの目に触れるときには、反物ではなく着物の形になっています。
 
付下げは、着物に仕立てたとき、肩山と袖山を境に、前も後ろも模様が上向きになるようにつけられたものです。
なかには訪問着のように、模様が絵羽風につけられているものもあり、付下げ訪問着と呼ばれて、見た目には区別がつきません。
 
一方小紋は、前側で上向いていた柄が後ろにいくと逆さになってしまいます。これを避けるために、始めから上を向いたり下を向いたり、向きのない柄づけが多く見られます。
もともとは柄の名称ですが、今では着尺地(きじゃくじ=着物一枚分の布地、反物)の総称としても使われます。
小紋は模様の大小、意匠(デザイン)、価格もさまざまで範囲が広く、初めて着物を着られる方には、挑戦しやすい着物のひとつでしょう。
店頭では、訪問着と違い、一般には付下げも小紋も反物の状態で置かれています。

江戸小紋

江戸小紋の工場で職人さんが糊置き作業
扇面柄を糊置きした白生地。糊に色がついています
丁子屋は、江戸小紋が好きです。これほど便利な着物もありません。便利というだけでなく、どんな帯と合わせても、品格があります。
染めの着物をそろえるなら、あるいは小紋で迷うなら、ぜひ一枚は江戸小紋の着物をお持ちいただきたいものです。
 
江戸小紋は、きわめて小さい文様の「型紙」を彫り、布地において糊で防染し、染料で染めた「型染め」のひとつです。ほとんどが地色のほかに一色だけで染めます。
同じ型染めでも、小紋との違いは柄の大きさにあります。極小模様といわれるように、文字通りミリ単位のものもたくさんあり、遠目には無地に見えます。
もともと江戸小紋は、江戸時代の武士の裃(かみしも)に用いられた柄で、藩によって定められた柄がありました。
 
江戸小紋というと「鮫(さめ)」柄が最もポピュラーな柄でしょうか。これと並んで、「行儀(ぎょうぎ)」「角通し(かくとおし)」「千筋」「万筋」(いずれも縞柄)などが代表的な文様です。
一方、おしゃれ着向きの楽しい柄もあります。「大根とおろし金」「狐」「子猫」「宝づくし」「茄子」「文字」などさまざま。
いずれにしても、柄が細かくなるほど格が高くなり、技術や手間がかかりますので、お値段も高価になります。
近年では、「毛万二つ割」(毛万筋の筋一本をさらに二分割した極細い筋柄)などの極小ものの型を彫る職人さんの数も、ごくわずかになりました。お値段のお安いものは、シルクスクリーンで染めたものが多いようです。
 
江戸小紋は帯合わせの範囲が広い着物です。
袋帯や礼装用の織名古屋帯を合わせれば、かなりフォーマルな場面(あまり重くない結婚式、お茶会、パーティー、入卒業式など各種式典)に重宝します。
また染名古屋帯やしゃれ袋、八寸名古屋帯と合わせれば、観劇やお食事、同窓会出席などおしゃれ着や街着として楽しめます。
 
極小模様の格の高い江戸小紋や、紬でも無地のものは、一つ紋(紬の場合は縫い紋のみ)をつければ略礼装になります。
ですが染め抜きの紋の入った江戸小紋は、くだけた場所では重すぎますので、おのずと着用の範囲が限られてしまいます。外出着としても着るようでしたら、染め抜き紋はつけないほうが賢明かもしれません。
ちなみに、染めの色無地の着物は、お茶席や祝典・法事など吉凶両用の略礼装に用いられることがほとんどなので、染め抜き紋をつけておいたほうがいいでしょう。
洋服の無地感覚と違い、着物の無地は、上記のように礼装がほとんどで、ことに黒一色の無地の着物は、染め抜きの五つ紋をつけて、正式の喪服としてしか用いません。

外出着と普段着

お召しと紬

縞お召しに更紗柄の名古屋帯
ともに先染め織物(布地に織る前に糸を染めた織物)の代表ですが、お召しは織物のなかでも最も”染めもの”(先染めに対して後染めという)に近い、高級素材です。
 
「生糸」(紬は「紬糸」で織る)に強い撚りをかけ、糸を縮ませて織ったもので、表面にしぼがあります。このしぼがお召し独特のしゃきっとした感触を生みます。
しかし、水気にあたると縮みやすいという欠点のため、これまでは敬遠される傾向にありましたが、近頃では防縮加工も発達し、だいぶ改善されてきました。
 
代表的な産地としては、京都・西陣(西陣お召し)と群馬・桐生(桐生お召し)が有名ですが、新潟の十日町・塩澤(塩澤お召し)でも織られています。
丁子屋は、昔からお召しが好きで、京都のお召しブランド『矢代仁』の西陣お召しや塩澤のお召しを置いています。
横段柄の紬に藍染めの名古屋帯
紬は、真綿から紡いだ「紬糸」で織ったものです。
東北から沖縄まで全国各地に無数の産地があり、ほとんどの紬に産地の名前が付けられています。
 
なかでも有名なのが茨城の「結城紬」と鹿児島の「大島紬」ですが、このふたつは対照的な紬です。
「結城紬」は、繭を真綿に広げ、真綿から紡いだ糸で織りあげたものに対し、「大島紬」は、繭から直接糸を引いた生糸で織ったものです(ですから厳密にいうと、大島紬は紬ではありません)。
このほかに、「米沢紬」「信州紬」「郡上(ぐじょう)紬」「久米島紬」「琉球絣」など。
 
もともと紬は、庶民の衣類に使われていましたから、丈夫で軽く、素朴な風合いは洋服でいえばツイードの感触に似ています。
柄も、絣や縞、格子が多く、現代では街着やおしゃれ着として愛用されています。が、なかには無地のものもあり、縫い紋などを付けて軽い礼装として用いられます。
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