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4.コートと羽織のおしゃれ■道行以外のコートと見直される羽織

コートのはなし

無地の紬地で仕立てた丁子屋オリジナルつぼ折れコート
着物を着る人が悩むのは、冬の寒さよりも夏の暑さです。洋服に比べて着物は、重ね着をするので着ていて暖かい衣類だからです。
 
着物が寒いという人は、真冬に化繊の襦袢や着物を着ているのではありませんか。絹の襦袢やメリンス(薄手のウール)の長襦袢を着てみてください。絹の着物を着てみてください。洋服よりもずっと暖かく感じるはずです。
それでも寒いときは、風の通り道をふさげばいいのです。風の通り道とは、衣紋を抜いた衿首や袖の振り、広い袖口のことです。
逆に夏は、ここが風の通り道になって、涼しさを呼ぶのです。
 
コートといえば、道行コート。着物と帯をそろえて、次に作るのがこのコートでしょう。
もっとも成人式などでは、振袖の上にコートを着ないで、ショール(なぜかそろって白いふわふわ)を羽織るのが、お決まりのパターンのようですけど。成人式以外、着物を着ないという人ならば、コートは必要ないかもしれませんね。
 
「道行」というのは、衿の形を指す言葉で、正確には「道行型衿のコート」ということになります。同じように、七五三の三歳女児が着る「被布」も、「被布衿」という衿の形を指す名称からきています。そのほかに「へちま衿」「千代田衿」「都衿」などが一般的な衿の形です。
 
丁子屋がおすすめしたいのが、丁子屋オリジナルのつぼ折れコート
お能の「壺装束」が原型です。振りが閉じていて衿巾が広い。衿を外側に折ればへちま衿、立てればショールも不用の暖かさです。振りが閉じていますから、振袖の上に着ても、長い袂(たもと)をたたんでしまえます。背中にゆとりがありますので、変り結びに結んだ帯も大丈夫です。
素材は、無地の紬地、かの子絞りの絹地、ウールなどさまざま。なかでも、絞りのつぼ折れコートは、絞りの生地がキルティング素材のように空気を含んで暖かく、見た目も華やかです。
丁子屋創立百周年記念で発表したのが、和洋コートです。
着付け教室のある生徒さんが、厳冬の2月にパリへ行くことになりました。着物も持っていくことにしましたが、平たくたためる着物や帯と違い、防寒コートはかさばります。そこで、洋服のコートを着てもいいでしょうか、と彼女は、一枚のオーバーコートを持ってきました。それは、黒のウール地で仕立てたコートで、袖付けが広く、全体にたっぷりしたシルエットでした。前はボタンどめがなく、かき合わせて着ます。
 
以前から、洋服の上にも着物の上にも着られるコートがほしい、と考えていましたので、彼女のコートを参考に、和洋兼用のコートを作りました。試作品は、黒のカシミヤで作りました。軽くて暖かくて一度手を通すと手放せませんが、カシミヤで作るとそれなりのお値段になってしまいます。
素材をウールにすれば、お求めやすい価格になりますので、これ以降、衿巾や全体のシルエット、色などを変えたりしながら、毎年作り続けてきました。
つぼ折れコートと和洋コートは、「初めてのきもの…丁子屋流コーディネート…冬じたく(12月)、師走の声(12月)」もご参照ください。

羽織のおしゃれ

丁子屋では、「懐古布」というネーミングで、リサイクル販売を行っております。お客様や着付け教室の生徒さんがお持ちになった着物や帯、小物をお預かりして、値段をつけ販売しています。中古品がほとんどですから、値段はびっくりするほどお安いのです。その懐古布で、何が一番持ち込まれるかというと、ウールの着物と羽織です。
 
いずれも、着物を日常的に着ていた時代の名残りです。
ウールの着物は、濡らしてもしみになりませんし、手入れも簡単、何よりお値段がお手頃ですから、格好の普段着でした(ではなく、今も格好の普段着です)。
同様に羽織も、今より頻繁に着用されていました。たとえば、紋付の黒無地の羽織、最近では、全くと言っていいほど見かけませんが、昔は大変重宝されていました。学校の入学式や卒業式に列席する母親は、一様に、色無地の着物の上に黒の羽織を着ていましたし、近所にお通夜でもあれば、普段着(の着物)に黒い羽織をはおれば、立派な喪の装いでした。
 
黒い羽織ばかりでなく、しばらく前までは、実によく羽織を着ていました。今の人のように「帯つき」(着物に帯を締めただけのスタイル)で外に出るのは、ごく若いお嬢さんぐらいで、必ず上に何かはおっていました。現在では、着物の上に着るものというと、コートになってしまい、羽織は滅多にお目にかかりません。残念なことです。
 
羽織は、洋服でいえばカーディガンかブレザーで、コートのように、室内で脱ぐ必要はありません。
コートを着るほど寒くはないが、着物だけでは何となく薄ら寒い、といった時期に活躍します。また初冬や春先の外出は、羽織の上にショールをはおれば、暖かく過ごせます。また、寒さが厳しいときには、コートの下に羽織を着ればいいのです。
上と真ん中は袷の羽織、右は単衣の長羽織です
羽織の魅力は何でしょう。
コートと違って、帯が見えること。
着物と帯と羽織が織りなす色と柄のハーモニー、帯揚げと帯締めと羽織ひもの微妙なバランス。
羽裏(羽織の裏地)を楽しめること。
見えない裏に凝る、という日本人独特の美意識は、時間をさかのぼるほど発揮されています。「昔きもの」をみつけて、羽織の裏を覗いてみてください。その大胆さ、モダンさ、繊細さに驚かされるはずです。
 
右の羽織は、丁子屋で別染めした羽織です。黒地の羽織を脱いだ時の、裏地の緋色と贔屓(ひいき)の役者の隈取りが目に飛び込んできて、実におしゃれです。
ところで、男性の場合は、「紋付羽織袴」といって、羽織は正装になります。しかし女性の場合は、「帯つき」が正装で、塵除けや防寒のために羽織を着て行っても、フォーマルな席では脱がなければいけません。
羽織の後ろ衿は半分に折ります。そのまま着ている方を見かけますが、そうでないと羽織ひもが出てこないはずです。
 
 
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